「身辺調査」というのはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、素直に言葉から意味を予想すると自分(または他者)を調査するのだろうと予測できます。
正確には、身辺調査は安全に関わる職業に就く人に対し実施される可能性の高い調査です。
あまり自分には関係ないかな、と思っているあなた。実はそうでもないのです。
2025年5月に新法が施行され、もしかしたら身近な話となるかもしれません。
実際にどのような事を調査するのかというと、その調査対象者の背景やその人物の信頼性を調査する事で
信頼できる人物かどうかを判断する材料となります。
身辺調査は身元調査とも呼ばれますが、身辺調査と似ている調査に「素行調査」があります。
目次
身辺調査と素行調査の違い
身辺調査と素行調査の違いは、以下の表で説明します。
調査項目 | 身辺調査 | 素行調査 |
---|---|---|
目的 | 人物の信頼性確認 | 人物の行動・素行確認 |
調査範囲 | 現在の生活状況・周辺環境 | 現在の行動・交友関係 |
調査対象 | 就職・転職希望者 | 浮気調査・不倫調査対象者 |
主な用途 | 採用時の人物評価 | 浮気・不倫の証拠収集 |
上の表を見てもわかるように、身辺調査は素行調査とは異なり、調査対象者の生活状況を調査するものです。
一方、素行調査はというと、調査対象者の行動・交友関係を調査するものです。
身辺調査される可能性が高い職業
身辺調査をされる可能性の高い職業には、以下のようなものがあります。
- 公務員(警察官、消防士、自衛官など)
- 金融機関の従業員
- セキュリティ関連の職種
- 教育関係者(教員、保育士など)
- 医療従事者(医師、看護師など)
- 法務関係者(弁護士、司法書士など)
- ITセキュリティ関連の職種
- 重要施設の警備員
上記の職業の特徴は、社会的な信頼性や機密情報へのアクセス、公的な責任を伴う職種であることが挙げられます。
これらの職業は、個人情報や機密情報を扱う機会が多く、また公的な立場で活動するため、その人物の信頼性や適性が特に重要視されます。
特に公務員や金融機関の従業員は、国民の財産や権利に関わる重要な業務を担うため、身辺調査を通じて人物の背景や信頼性を確認することが不可欠です。
また、医療従事者や教育関係者は、社会的弱者と接する機会が多く、その人物の適性や信頼性が直接的に影響を与えるため、厳格な身辺調査が実施される傾向にあります。
新法施行で身辺調査の動きが強まるか?
2025年5月16日から「重要経済安保情報保護活用法」が施行されます。
この法律は、経済安全保障の観点から重要な技術や情報を保護することを目的としています。
具体的には、先端技術や重要インフラに関わる企業に対して、機密情報の適切な管理や、外国資本による買収規制などの措置を義務付けています。
また、重要技術の海外流出防止や、サイバーセキュリティ対策の強化も求められています。
この法律の施行により、特にIT、半導体、通信、エネルギーなどの重要産業に属する企業が適合事業者となり、身辺調査の必要性が高まることが予想されます。
適合事業者とは、重要経済安保情報保護活用法に基づき、経済安全保障上重要な技術や情報を扱う事業者として指定される企業を指します。
これらの企業は、機密情報の適切な管理や、外国資本による買収規制などの措置を義務付けられ、従業員の身辺調査も含めた厳格なセキュリティ対策が求められます。
適合事業者に指定されると、国からの支援や優遇措置を受ける一方で、情報管理体制の整備や定期的な報告義務など、より厳格な規制に従う必要があります。
身辺調査の必要性が高まる理由
近年、身辺調査の必要性が高まっている背景には、以下のような要因が挙げられます。
まず、情報セキュリティの重要性が増していることが挙げられます。デジタル化の進展により、企業や組織が扱う情報の価値が高まり、その保護が不可欠となっています。
特に機密情報や個人情報を扱う職種では、従業員の信頼性が情報漏洩のリスクに直結するため、厳格な身辺調査が求められます。
次に、グローバル化によるリスクの増大があります。
国際的な競争が激化する中、産業スパイや技術流出のリスクが高まっています。
特に先端技術を扱う企業では、従業員の背景調査を通じて、外国勢力との不適切な関係の有無を確認することが重要となっています。
また、社会的信頼性の確保という観点からも、身辺調査の必要性は高まっています。
公務員や医療従事者など、社会的弱者と接する機会の多い職種では、その人物の適性や信頼性が直接的に影響を与えるため、厳格な身辺調査が実施される傾向にあります。
さらに、2025年5月に施行される「重要経済安保情報保護活用法」により、適合事業者に指定される企業では、従業員の身辺調査を含めた厳格なセキュリティ対策が求められることになります。
これにより、特にIT、半導体、通信、エネルギーなどの重要産業における身辺調査の実施が増加することが予想されます。
このように、情報セキュリティの重要性、グローバル化によるリスク、社会的信頼性の確保、そして法規制の強化など、複数の要因が重なることで、身辺調査の必要性は今後ますます高まっていくと考えられます。
身辺調査の実施方法
身辺調査は主に以下の方法で実施されます。
まず、履歴書や職務経歴書の確認、学歴・職歴の照会を行います。
次に、住民票や戸籍謄本による本人確認、犯罪歴の有無の確認を実施します。
また、信用情報機関を通じて借入状況や返済履歴を調査します。さらに、SNSやインターネット上の発言履歴の確認、近隣住民への聞き取り調査も行われます。
特に重要な職種では、面接による人物評価や、心理テストによる適性検査も実施される場合があります。
これらの調査は、調査対象者のプライバシーに配慮しながら、適切な範囲で実施される必要があります。
身辺調査を探偵が実施する場合
身辺調査を探偵が実施する場合は、主に以下の方法で行われます。
まず、尾行や張り込みによる行動調査を実施し、日常的な行動パターンや交友関係を把握します。
次に、近隣住民や職場関係者への聞き取り調査を行い、人物像や評判を確認します。
また、SNSやインターネット上の発言履歴を詳細に調査し、不適切な言動や問題行動の有無を確認します。
さらに、出入りする場所や接触する人物の特定、金銭的な取引の有無なども調査対象となります。
これらの調査は、依頼者の目的に応じて、適切な範囲で実施されます。
身辺調査の注意点
身辺調査を実施する際には、以下の点に注意が必要です。
まず、個人情報保護法やプライバシー権に配慮し、必要最小限の範囲で調査を行うことが重要です。調査の目的や範囲を明確にし、対象者に事前に説明・同意を得ることも必要です。
次に、調査方法の適切性に注意が必要です。違法な手段や過度な調査は避け、正当な範囲内で実施する必要があります。
特にSNSやインターネット上の情報収集は、公開情報の範囲内に留めることが重要です。
また、調査結果の取り扱いにも注意が必要です。
収集した情報は適切に管理し、必要に応じて暗号化などのセキュリティ対策を講じる必要があります。
調査結果の開示は、関係者に限定し、目的外利用を防ぐことが重要です。
さらに、調査の公平性と客観性を保つことも重要です。
先入観や偏見を持たず、事実に基づいた調査を行う必要があります。調査結果の解釈においても、文脈を考慮し、誤った判断を避けることが求められます。
最後に、調査の継続的な見直しと改善も重要です。法規制や社会情勢の変化に応じて、調査方法や基準を適宜見直し、より適切な調査体制を構築することが求められます。
探偵に身辺調査を依頼するメリット・デメリット
探偵に身辺調査を依頼することには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
探偵に身辺調査を依頼するメリット
メリットとしては、まず専門的な調査技術と経験を活用できる点が挙げられます。探偵は尾行や張り込みなどの特殊な調査技術を持ち、一般の企業や個人では実施が難しい調査を可能にします。
また、調査の客観性が確保される点も重要です。第三者の立場から調査を行うことで、先入観や偏見を排除した公平な調査結果を得ることができます。
さらに、法的な知識と経験を活かした適切な調査方法の選択が可能です。個人情報保護法やプライバシー権に関する知識を持ち、違法行為を避けながら効果的な調査を実施できます。
探偵に身辺調査を依頼するデメリット
一方、デメリットとしては、調査費用が高額になる可能性があります。専門的な調査技術や経験が必要なため、一般的な調査と比較して費用が高くなる傾向があります。
一般的な身辺調査の相場は、基本調査で10万円から30万円、詳細調査で30万円から50万円程度となっています。調査の範囲や期間によっては、さらに高額になる場合もあります。
また、調査期間が長くなる可能性もあります。詳細な調査を実施するため、結果が出るまでに時間を要する場合があります。
さらに、調査結果の信頼性にばらつきがある点も注意が必要です。
探偵の能力や経験によって、調査の質や結果の信頼性が異なる可能性があります。そのため、依頼先の選定には慎重な判断が必要となります。
このように、探偵への依頼には様々なメリット・デメリットがあるため、調査の目的や予算、期間などを考慮した上で、適切な判断を行うことが重要です。
身辺調査の動き強まる?身辺調査される可能性が高い職業とは
ここまで身辺調査について直近の状況を交え解説してきました。
近年、企業や組織における身辺調査の実施が増加傾向にあります。特に以下のような職業や立場の人々が調査対象となる可能性が高いとされています。
まず、経営幹部や役員クラスの人材です。企業の重要な意思決定に関わる立場であるため、過去の経歴や信用状況、人間関係などが詳細に調査される傾向があります。
次に、金融機関や証券会社の従業員も調査対象となることが多いです。金銭取引に関わる業務の性質上、信用リスクの確認が重要視されるためです。
また、公務員や教育関係者も調査対象となる可能性が高い職業です。特に公務員は公的な立場であることから、過去の経歴や信用状況が厳しくチェックされます。
教育関係者については、児童・生徒との接する立場であることから、適性や過去の経歴が重視されます。
さらに、情報セキュリティに関わるIT企業の従業員や、機密情報にアクセスする可能性のある職種も調査対象となることが多いです。企業の機密情報保護の観点から、信頼性の確認が重要視されるためです。
このように、身辺調査の対象となる職業は、その職務の重要性や社会的影響力、機密情報へのアクセス可能性などによって決定される傾向があります。
ただし、調査の実施にあたっては、個人情報保護法やプライバシー権に配慮し、適切な範囲で実施されることが求められます。