どうやら自分に探偵を付けられている気がする!最近生活圏でよく見かける車がある!そのような状況に気づいた時のストレスや不安は大きいものです。探偵から突き付けられた証拠により精神的に大きなダメージを受けた場合も同様です。
このように探偵により精神的苦痛を受けた場合にどのような対処法があるのでしょうか。本記事で解説していきます。
目次
探偵をつけられた事による精神的苦痛は訴えられる?
探偵に精神的苦痛を受けた事で訴えを起こしたいとお考えになるかもしれません。
訴える事は出来るのか?という疑問に関しては、結論から言うと「訴える事が出来るが、訴える事が出来ない場合もある」という事です。
曖昧な表現となりましたが、どのようなケースで訴える事が出来るか、見ていきましょう。
探偵を訴える事の出来るケース
以下に代表的な訴える事の出来るケースを4例挙げます。
1. 違法な尾行・盗撮による精神的苦痛
探偵が過度な尾行や盗撮を行い、日常生活に支障をきたすほどの精神的苦痛を与えた場合は、プライバシー侵害として訴える事が可能です。
2. 誤った調査結果による名誉毀損
探偵の調査結果に誤りがあり、それにより社会的評価が低下し精神的苦痛を受けた場合は、名誉毀損として訴える事が出来ます。
3. 違法な手段による個人情報収集
探偵が違法な手段で個人情報を収集し、それにより精神的な不安やストレスを受けた場合は、個人情報保護法違反として訴える事が可能です。
個人情報保護法では、以下のような行為が禁止されています。
- 本人の同意なく個人情報を取得すること
- 不正な手段による個人情報の取得
- 取得した個人情報の目的外利用
- 第三者への無断提供
4. 無許可で営業している探偵
探偵が探偵として業務を行うには、公安委員会へ届出が必要となります。登録されている探偵の場合は「探偵業届出証明書」や「探偵業届出番号」の記載をwebサイトなどに提示している可能性が高く、もし提示が確認できなければ無許可営業の探偵の可能性が高いと推測できます。
無許可営業は探偵業法違反であり、法律で定められた基準や規制を無視して営業を行っているため、違法な調査活動による精神的苦痛の賠償請求が認められやすくなります。
また、無許可営業自体も1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となります。
これらの違反行為により精神的苦痛を受けた場合、民事上の損害賠償請求が可能です。
また、悪質な場合は刑事罰の対象となる可能性もあります。具体的には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される場合があります。
探偵を訴える事の出来ないケース
以下に代表的な訴える事の出来ないケースを3点挙げます。
1. 適法な調査活動の範囲内の場合
探偵が法律の範囲内で適切な調査を行っており、過度な追跡や盗撮などを行っていない場合は、精神的苦痛を感じても訴える事は難しいでしょう。
ここで言う適切な調査とは以下のようなものを指します。
- 公共の場所からの合法的な撮影
- 対象者の行動を遠距離から確認する程度の尾行
- SNSなど公開情報の収集
- 近隣住民への聞き込み調査(プライバシーを侵害しない範囲)
- GPSを使用する場合は車両所有者の同意を得る
- 調査時間は深夜を避け、日中の活動に限定
このように、一般的な探偵業務として認められている調査方法の範囲内であれば、たとえ不快感を覚えても法的な訴えは認められにくいと考えられます。
2. 依頼者に正当な調査理由がある場合
浮気調査など、依頼者に正当な理由があり、かつ探偵が適切な方法で調査を行っている場合は、精神的苦痛を理由に訴える事は困難です。
3. 具体的な被害が証明できない場合
「つけられている気がする」という主観的な不安感だけでは、実際の被害を証明する事が難しく、訴訟の根拠として認められない可能性が高いです。
被害を証明するためには、以下のような具体的な証拠が必要となります。
- 探偵による尾行や盗撮の写真・動画証拠
- 第三者の目撃証言や証明書
- 医師の診断書(精神的苦痛による不眠やうつ症状などの診断)
- 探偵事務所からの調査報告書や請求書
- 違法な調査方法を示す記録や証拠
- 日常生活への支障を示す記録(仕事の欠勤記録、生活記録など)
これらの客観的な証拠がない場合、単なる主観的な不安感では訴訟の根拠として認められにくいのが現状です。
たとえ、探偵の調査により精神的苦痛を受けた場合でも訴える事の出来るケースと出来ないケースがある事がわかります。
このように、探偵による精神的苦痛を訴える際の決定的な違いは、「違法性の有無」と「具体的な被害の証明」にあります。
違法な手段による調査や具体的な被害が証明できる場合は訴訟が可能ですが、適法な調査活動の範囲内で具体的な被害が証明できない場合は訴える事が難しいと言えます。
探偵と依頼者、どちらを訴えるべきか?
探偵による違法な調査活動により精神的苦痛を受けた場合、探偵と依頼者の両方を訴える事が可能です。
探偵事務所に対して問える責任
- 違法な調査方法の実行者としての責任
- 探偵業法や個人情報保護法違反の責任
- 調査活動による直接的な権利侵害の責任
依頼者に対して問える責任
- 違法な調査の共謀者としての責任
- プライバシー侵害を目的とした依頼の責任
- 調査結果の不正利用による二次的な被害の責任
このように、違法な調査による精神的苦痛の場合、探偵と依頼者の双方に法的責任が発生する可能性があります。
状況に応じて、両者を共同被告として訴訟を提起する事も検討に値します。
そもそも探偵が付けられていたのか?
探偵が付けられていたのか、いまいち確証が持てない場合があります。
誰かに尾行されているような気はするけど、それが探偵とははっきりわからないといった状態ですね。
本当に探偵が付けられているのか、確認するとしたら以下の方法が考えられます。
- 不自然な車や人物が繰り返し現れないか観察する
- 普段と違う経路で移動してみて、同じ人や車が追ってくるか確認する
- 防犯カメラの映像を確認し、不審な人物の有無を調べる
- 知人に協力を依頼し、第三者の目で監視されているか確認してもらう
- 専門家(探偵、警察、弁護士、セキュリティコンサルタント、カウンターサーベイランスの専門家など)に相談し、プロの目で状況を判断してもらう
- GPSなど不正な追跡機器が取り付けられていないか点検する
上記に挙げた方法ですが、まるでスパイ映画の主人公のような洞察力が必要な気がしてきますね。
プロの探偵の調査を素人が暴くのは至難の業かもしれません。
そうなるとやはり、探偵に調査をされているのかどうかは「探偵に調査を依頼」するのが得策だと考えられます。
訴える事が出来る「精神的苦痛」とは?
精神的苦痛を受けたと一言で表現されますが、その苦痛の深さや重さは人それぞれ異なります。
法的に訴訟の対象となる精神的苦痛には、以下のような具体例が挙げられます。
- 重度の不眠症やパニック障害の発症
- うつ病などの精神疾患の発症や悪化
- 仕事や日常生活に支障をきたす程度の不安障害
- 医師による投薬治療や通院が必要な状態
- PTSDの診断がされるほどの精神的トラウマ
- 自殺企図や自傷行為につながるような重度の精神的ダメージ
これらの症状が医師により診断され、探偵の違法な調査活動との因果関係が証明できる場合、訴訟の対象として認められる可能性が高くなります。
上述の例をみるとかなり大きなダメージを受けている状況です。ただ「付けられているような気がするので不安」といった感情だと訴訟は難しいのでしょうか。
このあたりは弁護士や警察などに相談してみると良いかもしれません。
法的措置他、弁護士を交えた対策
現状の打開策として探偵に法的措置をとる際には弁護士に相談しましょう。訴訟の他、和解など状況により最適なアドバイスをしてくれる事でしょう。
精神的苦痛に関する法律
精神的苦痛による損害賠償請求は、民法第709条(不法行為による損害賠償)及び第710条(財産以外の損害の賠償)に基づいて行われます。 これらの条文は、他人の権利や利益を侵害した場合の損害賠償責任と、精神的苦痛に対する慰謝料請求の根拠となります。
探偵をつけられた事による精神的苦痛の対処法まとめ
ここまで、探偵をつけられた事により精神的苦痛を受けた場合の対処法や問題点などご紹介してきました。
法的措置をとる事の出来るケースは、「違法性の有無」と「具体的な被害の証明」にあります。
合法な調査活動の範囲内で具体的な被害が証明できない場合は訴える事が難しいという事がわかりました。
とは言っても、具体的に症状が出てしまっている場合は専門機関に相談する事が重要です。
訴訟を起こさなくても和解など、最適な手段をアドバイスしてくれるので是非助けを求めましょう。