探偵は、依頼を受けてはじめて調査や調査結果の報告業務を行いますが、その「探偵が調査をする」という事に違法性はないのでしょうか。
依頼内容は浮気調査だったり人探しだったりしますが、調査は尾行や張り込みなども交えて行われます。
例えば、自分の元夫を自分で尾行するとストーカー行為として処罰される心配が頭を過りますが、探偵だとその調査は合法となるのでしょうか。
これから探偵に調査を依頼する事を検討している方、または探偵の調査に不安を感じている方、
安心して探偵に調査を依頼できるように探偵の調査の違法性について知識を備えておきましょう。
目次
違法な探偵業社は「探偵業法」で取り締まる
はじめに、探偵業に関する「探偵業法」という法律があります。
探偵業法は、平成18年に公布され、平成19年に施行された法律となりますが
この法律は「探偵業の適正化を図り、個人の権利利益を保護すること」を目的としています。
探偵業法が制定された背景としては、契約者と探偵間での契約内容に関するトラブルの増加や、調査した内容を用いて調査対象者への恐喝などの犯罪が発生していたことが挙げられます。
探偵に調査を依頼する内容は、調査対象者の特に公にしていないプライベートな内容を明らかにすることとなるので依頼先が悪質な探偵業社だったとしたら、このようなトラブルに発展する可能性は大いに考えられますね。
「探偵業法」では合法な調査の範囲が決められていて、その範囲を探偵業・興信所を営む業者に遵守してもらう事で違法な探偵業社が取り締まられています。
また、探偵業を営む際には、営業開始の前日までに営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会に届け出を行う事が義務付けられているので、届出を行わず探偵業を営む業者には注意しましょう。
届出を行っているのかどうかは、どう見分けるのか
探偵業の届出をしているかどうかは、「探偵業標識(旧:探偵業届出証明書)」を確認しましょう。
「探偵業標識」は、営業所や運営するウェブサイトへ掲示する事が義務付けられています。
探偵業社が標識を掲示していなければ「行政処分の対象」となり、探偵業社以外のものが偽って標識を掲示すると「罰則の対象」となります。
もし行政処分を受けたら、処分が行われた日から起算して3年間、各都道府県警察又は各都道府県公安委員会のホームページにて公表されます。
行政処分
公表の対象となる行政処分 | ・指示(当該被処分者が過去3年以内に指示を受け、又は過去5年以内に その他の処分を受けた場合に限る。) ・営業停止命令 ・営業廃止命令 |
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公表の内容 | ・届出書の受理番号 ・被処分者の氏名(法人にあっては、その名称及び代表者の氏名)及び主たる営業所の所在地 ・当該処分に係る営業所等の名称及び所在地 ・処分内容 ・処分年月日 ・処分理由及び根拠法令 |
掲示義務の例外として
「常時使用する従業者の数が5人以下である場合」「当該探偵業者が管理するウェブサイトを有していない場合」は、掲示の免除があるので掲示されていないからといって違法とならないケースがあるのですが
「探偵業標識」に記載のある届出書の受理番号などの情報を確認し安心して任せられる探偵社かどうかを判断しましょう。
探偵の違法行為の例
さて、探偵が調査をする事が全て合法となるわけではありません。
というのも、先に紹介した「探偵業法」を順守した調査や業務運営が行われている場合は違法性はないのですが、
調査方法や、調査により取得した情報の取り扱い方法により違法行為となってしまう場合があります。
どのような行為に違法性があるのか、いくつか例を挙げてご紹介します。
無断で住居侵入
他人の敷地内に無断で入る行為は「住居侵入罪」に該当します。
例えば、調査の一環として尾行や張り込みをする際に、断りなく他人の敷地内に入るような行為は
違法性のある行為となりかねません。
また、住居侵入罪は逮捕される可能性もあるので、そのようなリスクの高い調査をする探偵には依頼しない方が賢明でしょう。
調査で取得した情報の公開・漏洩
調査で得た情報を無断で公開、または漏洩することは「プライバシーの侵害」にあたります。
探偵は、依頼を受け調査し、その調査で得た情報を依頼者へ報告する義務がありますが、情報を別の場所に公開、または漏洩するのは言語道断ですね。
「プライバシーの侵害」そのものは、刑法上では犯罪とされておらず罰則はないのですが、被害者は損害賠償請求を行う事ができる違法行為です。
調査で取得した情報を元に脅迫や恐喝
脅迫・恐喝という言葉を見るだけで、もちろんそれは悪徳探偵だと思います。
そんな探偵などいるのか?と考えるかもしれませんが、残念ながら悪徳業者は存在するようです。
例えば、調査で知り得た内容を依頼者に報告する前に、調査対象者に接触し結果を買い取ってもらう交渉をし、
費用を二重取りするケースもあるようです。
探偵にもしも恐喝や脅迫をされたら、警察に相談する事をおすすめします。
上記のような例の他、戸籍や住民票などの個人情報を不正に取得する行為も違法になります。
依頼をする際にはしっかりとした探偵社を選ぶようにしましょう。
探偵の合法的な調査とは
探偵は、その調査方法や情報の取り扱いにより違法になる事はありますが、探偵に調査を依頼する事や、探偵が「探偵業法」に定められた範囲内で調査をする事は違法ではありません。
探偵業法で、どのような調査方法は合法なのか記載がありますが具体的には、次のような調査は合法な調査となります。
- 尾行: 探偵業法に基づく尾行
- 張り込み: 適正な方法で行われる張り込み
- 聞き込み: 探偵業法に基づいて行われる聞き込み
- 証拠収集のための写真撮影: 適切な方法による証拠を得るための写真撮影
違法な調査をするリスク
探偵が違法な調査をしてしまった場合のリスクはいくつかあります。
探偵側のリスクとしては、営業停止などの行政処分の他、刑事処分を受ける可能性がありますし、探偵業社の信頼性が損なわれる事態となる事は想像に難くありません。
一方、依頼者側のリスクについても考えてみましょう。
違法な調査で得た証拠は、証拠として認められない可能性が高く、高額な費用で依頼したにもかかわらず依頼者が期待していた成果が得られない場合があります。
また、探偵が違法行為をし調査をすると依頼者自身にも法的な影響が降りかかる事も考えられます。
依頼者が、違法な調査をする事を知っていた場合、またはそれを奨励していた場合には、共犯として責任を問われる可能性があるので注意が必要です。
同様に、違法調査により他人のプライバシーが侵害された場合、依頼者も連帯して損害賠償の賠償責任を負うことがある事も覚えておきましょう。
更に、復讐目的やストーカー目的の調査依頼だと、犯罪に加担する行為となりかねないので探偵社も調査依頼を受ける事は違法となります。
その他、差別につながる素行調査、例えば、特定地域の出身であるかどうかや帰化した人物であるかなどの調査も探偵が依頼を受けるのは違法となります。
探偵業法やその他の法律に違反する行為を行うことは、探偵自身だけでなく依頼者にも法的な影響を及ぼす可能性があります。例えば、盗聴や盗撮、無断でのGPS追跡などは明確に違法とされています。
このように、探偵は、法律を遵守し、合法的な調査手法を用いることが求められます。
違法な調査を行うことで、刑事罰や罰金、営業許可の取り消しなどの厳しい処分を受けるリスクがありますし依頼者自身も影響が降りかかる場合があるので違法調査には十分注意しましょう。
探偵業社の義務
探偵は、法律や倫理に従って業務を行うためのいくつかの義務があります。
探偵業を開始する前に「探偵業届出証明書」を届出て、受け取る事から始まりますが、その他の探偵の義務としては以下のようなものがあります。
秘密保持
業務上知り得た依頼者や調査対象者に関する情報を第三者に漏らしてはならず、厳重に秘密を保持する義務があります。
合法的な手法の使用
法律に違反しない方法で調査を行う義務があります。
盗聴、盗撮、無断でのGPS追跡などの違法な手法を使用してはなりません。
契約書の交付
依頼者と契約を結ぶ際には、調査内容、料金、調査期間など契約内容を明確に記載した書面を交付する義務があります。
報告書の作成と交付
調査終了後に依頼者に調査の詳細な結果が記載された調査結果を報告する書面を作成・交付する義務があります。
探偵の調査は違法か?
ここまで、探偵の調査は違法なのかという事にフォーカスしてご説明してきました。
探偵は、探偵業法を順守する事が義務付けられていますが、その範囲内での調査は合法となります。
探偵が調査するという行為は全て合法というわけではなく、違法と見なされる調査もあります。
また、依頼があったからといって全ての依頼を受けられるわけではありません。
探偵側はもちろん、依頼する側も、依頼内容が違法ではないかどうかを慎重に考えてから調査を依頼するようにしましょう。
探偵に依頼をするときには、信頼できる探偵社を選ぶ事が大切です。